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東京地方裁判所 平成5年(特わ)1743号・平5年(特わ)2348号 判決

本籍《省略》

住居《省略》

会社員

田中泰

《生年月日省略》

本籍及び住居《省略》

無職

林茂

《生年月日省略》

本籍《省略》

住居《省略》

会社員

清田善則

《生年月日省略》

本籍《省略》

住居《省略》

会社員

森島瀞

《生年月日省略》

主文

被告人田中,同林及び同清田をいずれも懲役6月に,同森島を懲役5月に,それぞれ処する。

この裁判確定の日から,被告人田中に対し4年間,同林,同清田及び同森島に対しいずれも3年間,それぞれその刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人田中は,ビールその他の酒類の製造販売等を目的とする麒麟麦酒株式会社の総務部長(平成5年3月31日からは総務部審議役),被告人林は,同部顧問,被告人清田は,同部副審議役,被告人森島は,同部法務担当部長代理兼総務担当部長代理の地位にそれぞれあったものであるが,共謀のうえ,別表記載のとおり,平成5年2月10日ころから同年6月2日ころまでの間,前後42回にわたり,東京都渋谷区神宮前6丁目26番1号の同社6階応接室他10か所において,いずれもいわゆる総会屋として活動している株式会社森本企業調査会取締役小笠原均他41名に対し,同年3月30日開催の麒麟麦酒株式会社の第154回定時株主総会における株主権の行使に関し,それぞれ別表「供与の趣旨」欄記載の趣旨で,同社の計算において,現金合計4635万円を供与したものである。

(証拠)

事実全部について

一  被告人4名の各公判供述

一  被告人田中の検察官調書(乙4,5,28)及び警察官調書(乙2,3)

一  被告人林の検察官調書(乙8ないし10)及び警察官調書(乙6,7,29ないし31)

一  被告人清田の検察官調書(乙14ないし18,36)及び警察官調書(乙12,13,33ないし35)

一  被告人森島の検察官調書(乙23,37)及び警察官調書(乙19ないし22)

一  ○○○(甲6),○○○○○(甲9)及び○○○○(甲11)の検察官調書

一  ○○○○(甲2),○○○○(甲3),○○○○(甲12),○○○○(甲13),○○○(甲14),○○○○(甲15),○○○○(甲16),○○○○(甲17),○○○○(甲18),○○○(甲19),○○○○(甲20),○○○○(甲21),○○○(甲22),○○○○(甲23)及び○○○○(甲24)の警察官調書

一  捜査報告書(甲25ないし27)及び実況見分調書(甲85)

一  商業登記簿謄本(甲1)

別表記載の各事実について

一  次の供述者の検察官調書

小笠原均(謄本。甲31。番号1について。以下番号のみで示す),田岡邦之(謄本。甲37。番号3),梶谷正幸(謄本。甲43。番号7),腰越任一(謄本。甲49,50。番号8),下川芳男(謄本。甲56ないし58,99。番号11,12,17),高栁宜和(謄本。甲65。番号20),鄭照謨(謄本。甲71。番号38),西田次男(謄本。甲76。番号39),木村孝司(謄本。甲82。番号41),埜瀬建(甲89。番号2),芳賀龍臥(甲90。番号4),坂井善太郎(甲92,93。番号5),久保信廣(甲94。番号6),川本正吾(甲95。番号9),吉岡雅刀(甲96。番号10),小川薫(甲97。番号11),島崎榮治(甲98。番号12),森洋(甲102。番号13),島本修次(甲103。番号14),山本博信(甲104。番号15),柿原恒(甲105。番号16),大矢秀利(甲106。番号18),鶴正完(甲107。番号19),生賀眞治(甲108,109。番号21),中島安広(甲110。番号22),岡本正宏(甲111。番号23),安海植(甲113。番号24),杉山功(甲114。番号25),森部文雄(甲115。番号26),高橋正(甲116。番号27),守谷義隆(甲117。番号28),竹田晴究(甲118。番号29),田村敏行(甲119。番号30),浅野勝也(甲120。番号31),為永龍三郎(甲121。番号32),安田喜和(甲122。番号33),川村節男(甲123。番号34),串田靖夫(甲124。番号35),久保正三(甲125。番号36),篠崎鐵男(甲126。番号37),坂本眞三(甲127。番号40)。新貝宰(甲128。番号42)

一  以下の捜査報告書

甲86(番号7,17,20,38,39,41),甲87(番号17),甲88(番号38),甲91(番号4),甲100(番号11,12),甲101(番号12),甲112(番号23)

(法令の適用)

[被告人4名に共通]

罰条 (別表の番号ごとに)刑法60条,商法497条1項(いずれについても懲役刑を選択)

併合罪の処理 刑法45条前段,47条本文,10条(犯情の最も重い別表番号7の罪の刑に加重)

刑の執行猶予 刑法25条1項

(量刑の事情)

本件は,ビール業界最大手で,わが国屈指の企業でもある麒麟麦酒株式会社において,株主総会関連の事務を担当していた被告人らが,同社の株主総会に関し,その円滑な議事進行を図る目的で,いわゆる総会屋計42名に合計4600万円を超える現金を供与したという事案である。被告人らはいずれも,株主総会の健全な運営を図る目的から,総会屋を排除するために商法が改正され,このような利益供与が禁止されるに至った事情を十分知りながら,株主総会の議事が混乱し,これにより同社の対外的な評価が下がること等を恐れる余り,主として,被告人田中が原資となるべき資金の捻出,被告人森島がその保管,被告人林及び同清田が具体的な供与行為を行うという役割分担のもとに,犯行を重ねたものであって,誠に悪質というほかない。その結果,同社における株主総会の健全な運営が阻害されたばかりでなく,多額の会社財産が多数の総会屋に供与されたことよって,同社の会社資産が流出するとともに,同社自体が企業に巣くう総会屋の温床となるなど本件がもたらした社会的な影響にも重大なものがある。こうした事情に鑑みると,被告人らの刑事責任は軽視を許されないというべきである。

しかし,他方,同社においては,昭和60年ころからいわば慣行的に総会屋に対する利益供与が行われ,被告人らは,その役職上事務の引き継ぎを受けて,やむを得ず犯行に及んでいたという面も否定できないこと,供与した現金については,その全額が返還され,結果的には会社資産は減少していないこと,被告人らは,本件により相当期間身柄拘束を受けるとともに,被告人林を除くその余の被告人については社内的にも懲戒処分を受けるなどの社会的な制裁も受けたこと,被告人らにはいずれもこれまで前科がなく,本件を反省しているなどの事情もある。

そこで,これらの諸事情を総合勘案し,本件において被告人らの果した役割等も考慮したうえ,被告人らをそれぞれ主文掲記の刑に処してその責任を明確にするとともに,社会内で更生を図る機会を与えるのが相当であると判断した。

よって,主文のとおり判決する。

(裁判官 小池勝雅)

<以下省略>

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